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南アメリカ旅行
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エクアドル国境へ
コロンビアは西へ進むとアンデスの支脈を何本も越さなければなりません。谷間は暑く赤道が近いことを改めて気づかせてくれます。エクアドルに近づくとインディオとの混血のメスティゾが目に付くようになります。
竹林と雨、静かな停滞
その日の夕刻カイセドニアに宿をとりました。カウカ川沿いも暑いので、1日走ると体中がべとつきます。朝晩冷え込む山の上とは違い、１日の終わりにシャワーが欠かせません。
西向きの部屋の窓からは、眼下に広々とした牧場が、そしてその向こうには険しい山々が見えます。それらがおりからの夕日に赤く染まって、なんともいえない穏やかな風景を創り出しています。長かった1日を思うと、いつもながらなんともいえない満ち足りた気持ちになります。
翌朝は、えらい雨の音でめがさめました。宿の下の清流は泥川と化し、山も牧場も雲の中です。しようが無いので雨がやむまでゆっくりすることにしました。天井まである観音開きの窓を開け放つと、テラスの向こう側に、外の景色が大きく広がります。
良く見ると南側はうっそうとした竹林になっています。最初こんなところに竹があるというのが良く理解できず、その風景にも南米には会わないような違和感がありました。
ベッドに横になってボーットしていると、竹林の周りにガスがまとわり付いているのがみえます。やや弱まった雨脚の中で、ガスが切れかかったり、林をスッポリ隠したり、様々に変化しています。何か懐かしい日本的なその眺めに、地球の裏側にいることを忘れて、しばしうっとりしてしまいました。
繰り返しやってくる坂道との格闘の日々の中でのしばしの休息です。時間がゆったりと流れていきました。
ポパヤンの娘
カリで予備のタイヤを2本買いました。カリを出ると山陰が見えないほどの平原が続きます。両側は広々とした牧場のようで、快適な道が続きます、、、。、、、と、ここはアンデス山中です、そんな快適な道がそう長くは続くはずもありませんが。またいつものようにアップ＆ダウンが始まりました。またこの辺は、午後からは天気が下り気味で時に大雨になります。
ポパヤンは通り過ぎるだけの予定でした。ところが、食事中に自転車の工具を全部盗まれてしまいました。工具なしでは走るわけにもいかず、その日はそこに泊まらざるを得なくなりました。まずは、旅行者に教えてもらった安宿に落ち着きましたが、久しぶりの盗難にがっくりしてしまいました。工具なんかを持って行ってもしょうがないと思うのですが、、、。
ポパヤンはこの辺では大きな町です。高い建物があるような町ではありませんが、丘を背景に中世風の町並みが独特の趣をかもし出しています。工具を探し歩いている際に、現地の女の子と知り合いました。デパートの店員だそうです。彼女は意外にも海外への意識が高く知識が豊富です。仕事を終えた後の彼女との会話は毎日とてもたのしみでした。
ゼロから初めて、この頃までにスペイン語が少しだけですができるようになっていました。家族や趣味のことから世界情勢まで、わずかなボキャブラリーでも駆使すれば何とかなるものです。そんなわけで、“工具をそろえる（？）”のに１週間もかかってしまいました。
一方、この町はどうもドロボーの多いところのようです。ある日、町を見下ろす丘の上の公園を歩いていたとき、同宿のドイツ人カップルが、ひったくりにあう現場を目撃することになりました。被害者と一緒に途中まで追いかけましたが、公園の下に仲間がバイクで待っており、そのまま逃げられてしまいました。
戻って宿の主人に話したところ、パスポートだけは戻すように“手配”してくれました。、、、なんというところでしょう!!
とにかくコロンビアは南米でも最も治安の良くないところなので、あなたも気をつけてくださいね。
それでも、もちろん、彼女とのお茶も楽しいし、もっともっと居たい町なのです。でも、いればいるほど出るのが辛くなるので、これも旅人の宿命と自分に言い聞かせて、一路エクアドル国境へ向かいました。、、、ポパヤンが遠い山並みの陰に隠れてもまだ、彼女の笑顔がちらついていました。
どこまでも雄大な眺め、光と影の饗宴
国境までの道も地形が変化に富んだところを通ります。メルカデレスの町もメサの上にあります。１０Ｋｍほど手前で例のごとく絶壁に刻まれたジグザグの道を登ります。メサの上からの眺めは格別です。深い谷を挟んでそそり立つコルディエラの山々が一段と高くなりその迫力を増します。
その頂は底の平らな真っ黒な雲の中に隠れています。夕日はすでにその雲の陰に隠れ、メサの上の平原はかなり薄暗くなっております。その箱庭のように見えるメルカデレスのライトグレーの町の上には、くっきりとした虹がかかっていました。真っ黒な雲を背景にして実に鮮やかです。
また、周りの山々の頂だけが、おりからの夕日を浴びて金色に輝いています。まるでメサを中心にした直径数十Ｋｍの舞台を見ているようで、ここもまた例えようも無い美しさでした。
メルカデレスからパストまでのルートは、現在は当時とは変わっています。当時のメインルートはラウニオン、ブエサコ経由の山間を通っていました。そのルートは舗装もされず、なぜこんなところに、、と思わずにはいられないような、地形の急峻なところに道が刻まれていました。それだけに“すごい”眺めが展開します。もし余裕があれば、是非あなたも旧道を、、、！
インディオと国境
パストはこれまでの町と比べてインディオが多い町です。どうもエクアドルに近づくに従い民族の構成が変わってきているようです。インディオのいでたち振る舞いは時にすさまじいものがあります。
大好きな市場に行ってみたときのことです。そこで見たインディオの老婆の姿に唖然としてしまいました。今朝方の雨で地面は泥んこです。その上を彼女らのほとんどは素足で歩いています。標高２５００ｍです。泥は冷たいはずです。背中には自分の身体ほどもある荷物を背負い、顔が地面に着くのではと思うほど前かがみになって歩いています。
真っ黒なスカートに、真っ黒なショール（？）をまとい、真っ黒な帽子をかぶっています。日に焼けたしわだらけの手や足は、さらにその姿を圧倒的なものにしていました。これまでアフリカやインドでも似たような光景を何度か目にしたように思いますが、ここで改めて、南米にもそんな生活をしている人々が大勢いることを知った思いでした。
国境の町イピアレス。コロンビア最南端の町に来てしまいました。国境を越しても同じスペイン語の国とはいえ、一つの区切りです。来し方を思わずにはいられません。初めて見る創造もできないような雄大で美しい眺めにも驚きましたが、やはり想い出すのは美しい女の子たちのことでした。
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