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南アメリカ旅行
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ボゴタへ山々を越えて
アンデス山中は信じられないほど雄大な風景が繰り返し繰り返し現れます。そんな山間には古いスペイン風の村々がひっそりと息づいています。そしてそこにも人々の変わらぬ営みがありました。
アンデスの村と街
コロンビアに入ってもベネゼラ以上に、山また山の日々です。ククタからパンプローナまでは、清流沿いに比較的緩やかで快適なのぼりが続きます。緑が美しい山間の静かな山村をいくつも通り過ぎます。
山が迫り、のぼりが急になった頃、パンプローナに着きました。ポンチョをまとったインディオが多い街です。その先の山中には町が無いため、早めに宿を取り翌日ののぼりにそなえることにしました。
５時、翌朝はククタでは想像もできないほど冷え込みました。あまりの冷たさに水で顔を洗うのがためらわれるほどです。唯一開いているバス停近くの店でケーキとコーヒーで朝食にしました。店の外では、黒っぽいポンチョに身を包んだ男数人が固まり、しゃがみこんで、やはりコーヒーをすすっていました。寒村の朝といったところです。
人気の無い曲がりくねった石畳の通りを抜けると、すぐに急なのぼりが始まりました。見上げれば、道は遙か天空をうねうねと続いています。ペダルを踏み込むごとに、道は高度をぐんぐん増していきます。さっきまで感じていた寒さはどこへやら、もう汗が滝のように流れ始めました。しだいにパンプローナの町並みが眼下にひろがります。町の中心部にある広場と教会、そしてついさっきまで寝ていたペンションもみえます。
やがて街は視界から消え道は高い尾根にでます。尾根に出ると急に、前方に深い谷を挟んで巨大な岩峰が現れます。この辺では最も高い4200ｍの峰です。、、、その眺めの雄大さ美しさを表現する術を知りません。いや、誰もどんな手段をもってしても、言葉でお伝えすることはできないのではないかかと思います。
もし機会があれば、是非貴方にもその場所に立ち、やや強めの風に身を任せながら、その眺めを堪能していただければと思います。アルプスなどとは違うもっと原始的で荒々しい光景を楽しめることでしょう。
道はさらに尾根伝いにぐいぐいと高度を増していきます。その尾根を過ぎると、、、またそこに、それまでのものに輪を掛けてドデカイ風景が展開されます。深い谷と巨大な空間、奇怪な地形が織り成す眺めが、これでもかとばかりに繰り返し現れ、ただただ圧倒されっぱなしでした。
バルボサの宿・爽やかな歌声
バルボサの手前ののぼりで腿の筋肉が痙攣寸前になりました。このところ峠越えが続き少しがんばりすぎたかもしれません。急ぐ旅ではなし、予定外でしたがバルボサで休養することにしました。
町の中心に近い宿には、製パン工場とパンの直売店の奥に、中庭を挟んで両側に4人部屋が並んでいます。１泊1ドルもしないので助かります。製パン工場の若い職人たちと部屋係の女の子が住み込んでいました。
夜、中庭の椅子の上でボーットしていると、仕事を終えた彼らがやってきました。私を取り囲んで質問攻めです。何のかんのと実ににぎやかで、おかげで遅くまでとても楽しいひと時をすごすことがで来ました。
特にベッドメークしてくれる15~16才の女の子は明るく実に愛らしく、意外にもやや控えめなところがまた魅力的です。聞けばみんな山の上の村の出身で、学校にもろくに行かず、家族のためにがんばっているとのことでした。
あまりの居心地の良さにもう一泊することにしました。二日目はのんびりとすごしました。市場に行ってみたりもしましたが、それよりも、赤道間近の高原の風の爽やかさと、宿の中庭の緑がとても気持ちよく、ほとんど1日中、中庭の木陰にある椅子の上でボーッとしていました。
椅子でうたたねしている間、部屋から部屋へ動き回るあの女の子の鼻歌がずーっと聞こえています。時おりここの女主人もやってきてます。隣の椅子に腰掛けてエプロンの上で食事の仕込みなどしながら話しかけてきます。とても気さくな方で、始めて会ったばかりのようには思えません。
また、仕事の合間、合間にあの女の子もやってきました。すんだ声ではにかんだように話します。時折見せる笑顔がとても素敵です。ドイツでガービーから貰い、ずっと持ち続けていた人形はそこで彼女にあげました。とても喜んでくれました。
おかげで、疲れはすっかり抜けました。
小説のような宿
ボゴタまではまたいくつか峠を越えますが、たいしたことはありません。谷川沿いに比較的快適な道が続きます。トゥンファを過ぎたころから雨が降り出しました。
思えば久しぶりの雨なので歓迎しても良いのですが、この雨がやたらと冷たく、手がかじかんでしまいました。唯でさえも寒い２５００ｍの山の上です。
その日の目的地に着けず、薄暗くなった頃やむなく幹線から少し外れたある村で宿をとることにしました。村は予想以上に小さく、雨の中たった一軒ある宿をやっと見つけ出しました。その頃までに雨はどしゃ降りになり、宿の広いロビー兼食堂の上の高い天井からも床にびしゃびしゃと雨が落ちていました。
停電だということで、調理場も食堂も、もちろん泊まる部屋も薄暗いローソクの明かりが揺れています。暗く寒々とした食堂には、床の石の上に雨が落ちる音が絶え間なく響き渡っています。まるで小説の1シーンでも見ているかのように、そこには現実感の無いラ・ミゼラブル的な光景がありました。
コロンビアの首都ボゴタ
道がまっすぐで平坦になると、まもなくボゴタの町並みが見えてきます。とても大きな町です。私が最初に抱いた、高原の“こじんまりした小都市”のイメージには程遠い、高層ビルが立ち並ぶ大都会です。
露天や市場ではハンバーグなどおいしい肉料理が安く食べられます。またコーヒーや種類豊富なジュース類もおいしいです。街の見物がてらそれらをつまんで歩くのは、大きな町での楽しみの一つです。特に街角の売店にある焼きたてのハンバーガーはとてもうまいです。食事は、体調維持のためと称しては、いつもおなかいっぱい食べることにしています。肉やチーズ類などの酪農製品が安いのは、それが大好物の私にとってはとてもうれしいことでした。
エクアドルのビザを取ったり、日本大使館で日本からの手紙を受け取ったりして数日すごしました。そうそう、ボゴタの手前でペダルがだめになったので、それも交換しました。
南米は自転車のロードレースに対する関心の高い土地です。このコロンビアはかつて、コチーセという世界チャンピョンを生み出したことがあるそうです。コロンビアで彼は知らない人がいないくらい有名で、国の英雄のような存在だそうです。そういえば途中、トレーニング中のレーサーに何度も会いました。
この急峻な山々はトレーニングには格好の場所に違いありません。
マグダレナ川を越える
ボゴタからマグダレナ川に向けて山を下ります。高度差２０００ｍを下るのでとても快適です。眺めは相変わらず雄大です。深く青い谷と高さを増す周囲の山々は目もくらむほど巨大な空間を創っています。そして全身をなでる風と身体が一体になるようなそんな錯覚を覚えます。次々と変化する風景はいくら見ても見飽きることはありませんでした。
途中、中世を思わせる街が山々の懐に横たわっていました。石造りの建物、石畳の道、オープンカフェは雄大な空間を背景に、アルプスの町もさもありなんと思わせるような、豪快な眺めと落ち着いた雰囲気が独特の趣を作り出しています。そのまま通り過ぎるのがもったいなく、つい“コーヒーブレイク”にしてしまいました。明るい日差しの下、雄大な山々を見ながらだと、コロンビアンコーヒーの香りもまた格別ですね。
ひたすら下り続けると、やがて起伏の無いひろびろした平原に出ます。マグダレナ川低地です。気温が一気にあがり、蒸し暑くなります。ヤシの木も点在するようになり、風景が一変し赤道が近いことに改めて気づかされます。人々の服装も晩秋から一気に真夏へ一段と開放的なものに変わり、女の子たちのチャーミングさが、また一段と際立つようになりました。
マグダレナ川を越えて、またのぼりかえしてもう一つ大きな山脈を越えると、今度はカウカ川峡谷にでます。
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