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南アメリカ旅行
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むせかえる熱気
寒冷な高地を下ると、そこは熱帯です。国名にふさわしい赤道直下の熱気が漂っていました。わずか数時間で人も空気も風景も、何もかもがガラリと変わりました。
リオバンバの市場
毎週土曜日はリオバンバで市場が開かれます。その日は朝から大変な人出でした。町全体が市場になったようです。周辺の町や村から、それぞれカラフルな伝統衣装に身を包んだ人々が集います。大きな荷物を背負っ人々が行きかい、あちこちで大きな声で値段の交渉がおこなわれ、町中があふれんばかりの熱気に包まれていました。
これまで、とかく冷たくて暗くて、汚いといった印象が強かったこの国ですが、なんのなんの彼らも結構エネルギッシュです。どちらかというと過酷な自然、それを相手に生きている彼らのたくましさをみせつけられたような気がしました。
見上げれば、澄み切った青空に、チンボラソの半円形の頂が白く輝いていました。
熱帯の低地
リオバンバから山を降りて、海岸沿いにペルーに入ることにしました。カハバンバからひと上りすると最後の峠です。峠からは東側に雲海が見えます。見回せば雲の上につきだした3つの高峰が見えます。その白い頂がとても印象的です。そこから数時間、道はくだりに下ります。くだりはいくら長くとも大歓迎です。例のごとく谷沿いに広がる雄大な眺めに酔いしれながら、久しぶりに、最高に気持ちの良い道中でした。これから暫くはアンデスとお別れです。
気温がどんどん上がるとともに、緑が増えてきます。それまでの荒涼とした風景が、緑豊かなとてもやさしいものに変わります。もう一つ変わったことがあります。人種です。どうも欧米系の人々の割合が増えたような気がします。ポンチョを着ていないからそう見えるだけではありません。インディオ系と思われる人々の顔つきも、高地の彼らとはかなり違います。
下りきるとそこは、まさに熱帯、赤道直下でした。気温も30度はくだらないでしょう。たった半日でこうも大きく変わると、ちょっと信じがたいような気持ちになります。唯、暑いところが好きなので暑いのは大歓迎です。また食堂にあるメニューも口に合うものが多くなり、うれしい限りです。
フリヌキ工具が無い
以前盗難にあったときにフリ−抜きも一緒になくなってしまっていました、ところがいくら探しても合うものが手に入らないので、ずーと気になっていました。後輪のスポークが折れた場合、フリヌキがないと新しいものと交換できないのです。自転車旅行にとっては致命的です。この先のグアヤキルで調達することにしました。
夕刻マチャラとグアヤキルへの分岐に着きました。4つある安ホテルは全て満室のため、その夜は警察署に泊めてもらうことにしました。近所の食堂でチーズ入りのスープをすすっていると、涼みに出てきたらしい女の子たちが話かけてきました。みんな、この熱気にふさわしく、若さがはちきれんばかりに陽気で開放的で魅力的な人たちです。体格の良い食堂のおばさんも一緒になって話が弾み、久しぶりの熱帯の夜は思いがけなくもとても楽しいものになりました。
グアヤキルは旅行ルートからは大きく外れています。自転車を預かってくれるという警察署に甘えて、グアヤキルをバスで往復することにしました。蒸し風呂のような町中を、自転車屋から自転車屋へ探し回りましたが、結局ありませんでした。
もう最後まで応急処置的な対応でしのぐしかありません。あとはそれが何とか最後までうまくいくことを祈るだけでした。
夕刻、少しばかりがっかりした気持ちでバスを降りると、また昨夜の彼女らと会えました。昨日と同じ店で夕食をとりながら、また楽しい時間をすごすことができました。おかげでまた明日への元気をもらったような気がしました。翌朝早く国境へ向けて出発しました。
太平洋岸の低地は豊かな熱帯の風景が続きます。バナナやパイナップルの畑が続きます。そういえば最近日本でも、エクアドル産のバナナ(チキータ)が目に付くようになりましたね。
起伏が無くとても快適な、ただちょっと物足りない道が続きます。ついこの間までのアップ&ダウンの道がうそのようです。日差しは強烈ですが、ペダルをこいでいる間は頬をなでる風がとても気持ちよく感じます。暑いのが好きで汗は全く気になりません。
途中立ち寄った集落で昼食にしました。バス停のそばにある露天でイモの揚げ物を食べてみました。中にチーズが入っており、さくっとした食感も久しぶりで、とてもおいしく頂きました。今までどこでも目にしたことが無いので、この店オリジナルかも知れません。あまりおいしかったので6個も食べてしまいました。
気がつけば、周りは繁茂する熱帯の樹木が美しく、それがその店の上に涼しげな木陰を投げかけています。ラジオから流れる軽快な曲がまた良く、そこにはなんとも豊かで静かな時間が流れていました。時折バスがやってくると店が少し忙しくなりますが、それ以外は皆のんびりです。
そこの娘でしょうか、小さな女の子が揚げ物をしたり、皿を洗ったりしています。真っ白なブラウスが爽やかでした。結局その日は気持ちの良いその場所を動くことができず、道の反対側にあるホテルに泊まることにしました。
国境まであと2日です。
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